株式公開市場には証券取引所への上場と、日本証券業協会への店頭登録、それに加えて、新興市場(マザーズ、ヘラクレス)への上場があります。
平成10年12月に証券取引法が改正され、取引所市場と店頭市場の関係が「補完」関係から並立の「競合」関係に位置付けられ日本における株式市場の階層が崩壊し市場間の競争が激化しています。
(1)マザーズ
マザーズは東京証券取引所が開設する市場です。既存の 1 部、 2 部とはコンセプトを別としています。「流動性」「新規性」「迅速性」「透明性」をキーワードにしています。
上場できる企業の条件を見ればマザーズのコンセプトがよくわかります。
@ 今後の成長または拡大が期待できる分野に属する事業を行うことによって、高い成長の可能性を有する企業
A 新たな技術または着想に基づく事業を行うことによって、高い成長の可能性を有する企業
上場申請については東京証券取引所の会員である幹事証券会社が、申請会社が上記の条件を満たす企業である旨の意見書を東京証券取引所に提出することにより適格性を確認することとなっています
(2)ヘラクレス
当初ナスダックジャパンとしてスタートした現ヘラクレスのコンセプトは以下のとおりです。
@ 申請書類を削減して「スピーディ」な株式公開を可能とする
A 「流動性」の高い株式市場を目指す
B 四半期ベースの情報開示など、ディスクローズを重視する
という点でマザーズと重なります。
しかしマザーズのように企業の限定はしていません。
ただし 4 つの基準を設けています。
@ スタンダード第1号
収益性、資産性を有し市場性の見込める企業
A スタンダード第2号
十分な資産性を有し市場性の著しく見込める企業(収益性は問わない)
B スタンダード第3号
売上高や総資産などの企業規模が大きく市場性の見込める企業
C グロース(ベンチャー)
事業において潜在的な成長性を有し、市場性の見込める企業
といった多様な基準を設けており、マザーズと競合するのは「グロース基準」ということになります。
(3)店頭市場
店頭市場は日本証券業協会が運営します。従来の株式公開は店頭公開を経て取引所公開へという流れがありました。しかしマザーズ、ヘラクレス等の競合市場が形成されたため、日本証券業協会でも制度改革を行っています。
日本証券業協会は平成 13 年 2 月に株式会社が市場運営を行う日本初のケースとしてジャスダックを立ち上げました。
(4)各証券取引所の新市場
各地方の証券取引所においても新市場が開設されています。
大阪証券取引所の「新市場部」、名古屋証券取引所の「成長企業市場」、福岡証券取引所の「 Q-Board 」、札幌証券取引所の「アンビシャス」などです。
(5)証券取引所
証券取引所は現在、東京、大阪、名古屋、京都、福岡、札幌の 6 ヶ所にあります。しかし平成 12 年 7 月に東京証券取引所がテリトリー制を廃止したため、東京周辺以外の企業の東京証券取引所単独上場が可能となったため、地方取引所の存在意義が問われる状況となっています。
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